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乳がんと抗うつ薬と妊娠..タモキシフェンとパキシルは併用しないほうがいいのか? [がん関連]


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最近パキシルについての情報がTwitterでいろいろ広まっているようです。
パキシル(一般名:paroxetineパロキセチン)はうつ病などで使われるお薬です。
paxil.jpg


これが妊婦さんによくないという情報なのですが、
以前からこの薬が気になっていたので調べてみました。 


【妊婦さんとパキシル】
パキシルの添付文書には以下のように記述(<>内)されています。
<海外の疫学調査において、妊娠第1三半期に本剤を 投与された婦人が出産した新生児では先天異常、特 に心血管系異常(心室又は心房中隔欠損等)のリスク が増加した。このうち1つの調査では、一般集団に おける新生児の心血管系異常の発生率は約1%であ るのに対し、パロキセチン曝露時の発生率は約2% と報告されている。>

簡単に言えば先天異常が2倍あったという事ですね。

<妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される 場合にのみ本剤の投与を開始すること。また、本剤 投与中に妊娠が判明した場合には、投与継続が治療 上妥当と判断される場合以外は、投与を中止するか、 代替治療を実施すること。>


つまり妊婦さんは、よほどの事が無い限り使わないほうがいいという事ですね。

ウィキペディアによれば、胎児危険度分類はカテゴリーC(;動物実験では胎児への有害作用が証明されていて、適切で対照のある妊婦への研究が存在しないもの。しかし、その薬物の潜在的な利益によって、潜在的なリスクがあるにもかかわらず妊婦への使用が正当化されることがありうる。)だそうです。


つまり動物実験では有害だったけど、人間の場合にはどうなのか分からないということですね。
当然ですよね、人間で赤ちゃんへの害を実験するわけにはいきませんから、今後そういった調査の結果が(もしかしたら)出てはっきりするまでは「有害かどうかは分からない」という事になります。


だから妊婦さんへの投与は【禁 忌】(患者には投与しないこと)にはなっていません。



【乳がん患者とパキシル】
ところでこのお薬は今年2月にも話題になりました。

「Selective serotonin reuptake inhibitors and breast cancer mortality in women receiving tamoxifen: a population based cohort study」
Published 8 February 2010, doi:10.1136/bmj.c693
Cite this as: BMJ 2010;340:c693

という論文が発表されたからです。

某所からのコピペ------------------------------------------------------------------------
「乳癌患者のSSRI併用、タモキシフェン*の有効性低下」
乳癌患者2430名を対象に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によりタモキシフェンの有効性が低下するという仮説をコホート研究で検証。タモキシフェンとSSRI(パロキセチン)の併用期間が25%、50%、75%増加すると、乳癌による死亡リスクがそれぞれ24%、54%、91%上昇することが判明し、仮説が支持される結果だった。
----------------------------------------------------------------------------------------------
*タモキシフェン(商品名:ノルバデックス、タスオミンなど)

詳しい事はもとの論文に書かれていますが、
タモキシフェンを使っている乳がん患者さんに、SSRIを併用した場合どうなるのか?という研究です。
数種類のSSRIで比較されています。

その結果タモキシフェンとパキシルの併用期間が長ければ長いほど、乳がんでの死亡率は上がるという事でした。
パキシルによって、タモキシフェンの効果が弱められると考えられている結果だそうです。


それで「他のSSRIはどうなの?」という事ですが、下のグラフのようにパキシル(青い実線)が突出しているようです。
[元の論文からコピーして注釈をつけたグラフ]
(縦軸が乳がんでの死亡率、横軸が併用期間)
kelc719773.f1_default.jpg
paroxetineパロキセチン(青実線)(商品名:パキシル)SSRI

sertralineセルトラリン(緑点線)(商品名:ゾロフト、ジェイゾロフトなど)SSRI

citalopram(赤点線)は日本で発売されていません。

fluvoxamineフルボキサミン(商品名:ルボックス、デプロメールなど)SSRI













タモキシフェンを使っている乳がん患者が、うつ病などの治療の時にパキシルを使うのはどうなのか考えてみました。
興味を持ったきっかけは、ふじくろはうつ病ではないのですが、乳房切除後とう痛症候群の治療としてSSRIも選択肢にあるからです。
うっかりしていると「大丈夫」などと言われて処方されてしまいますからね、自己防衛です。
実際タモキシフェン+パキシル服用の患者さんの書き込みが、ネット上で散見されました。


もし自分なら先生と相談の上で、パキシルは服用しません。
代替薬を考えます。
せっかく副作用を我慢して飲んでいるタモキシフェンの、効果が落ちるのは納得できませんから。



【乳がんで妊娠の可能性があって”うつ”の場合】
ましてこれから妊娠するかもしれないなどとなれば、2重のデメリットな訳ですから、
ほぼ間違いなくパキシルはお断りします。
(個人的には妊娠の可能性は全くありませんけど..)





【関連記事】
「『乳がん体験記2009 (12) ホルモン療法と”うつ”』」 2009-07-13




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コメント 3

ふじくろ

>>keykunさん
>>pekorin23さん
>>クローヴさん
niceありがとうございました。
by ふじくろ (2010-07-28 23:59) 

takumi

うんうん。SSRI使用にあたって凄い悩みましたもん!
乳主治医は関係無いって言ってましたが・・(苦笑)

でも精神科医と相談して、パキシルは服用したく無い!って言って正解♪
こんな結果があったんですね(@_@)。本当、自己防衛ですよね(^^;)
by takumi (2010-08-02 08:24) 

ふじくろ

>>takumiさん
えっ、「関係ない」ですか...それはちょっと...(・_・;)
でもtakumiさんは自己防衛されて別のお薬をお使いなんですね。
やはり患者側から、疑問や主張はしていかなければならないですね。
実感しました。(^^)

>>mannyさん
niceありがとうございました。
by ふじくろ (2010-08-02 21:24) 

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